事前に知っていたわけではないのですが、坂戸ポピーまつりに出掛けた際に横浜の関帝廟を思わせるような建物の佇まいを目にして興味を覚え、ポピーを見終えた後に訪ねてみたの。尚、掲載する画像は幾れも拡大表示が可能よ。気になる画像がありましたらクリックしてみて下さいね。
聖天宮は中国・台湾の伝統宗教・道教のお宮です。道教は中国三大宗教(仏教・道教・儒教)の一教です。信仰は中国史に遡り、聖天宮には道教の最高神・三清道祖(元始天尊・道徳天尊・霊寶天尊)と道教の神々が祭祀されています。聖天宮は康國典大法師が建立されました。大法師は若くして大病を患いましたが、三清道祖に祈願し、七年の闘病生活を経て病が完治されました。大法師は感謝の気持ちを抱き、多くの人々にも三清道祖にすがれるようにお宮を建てることにしました。建立地を探していたところ、坂戸のこの地にとお告げがありました。聖天宮は昭和56年(1981)より着工し15年の歳月を経て、平成7年(1995)に開廟しました。現存する道教のお宮では国内最大級です。装飾品は台湾より運び、台湾の宮大工によって建造されました。一万点以上の彫刻で飾られた天井、高さ5mもある龍の柱、千年木で彫られた門飾りは必見です。宗教法人 聖天宮
康國典さんは台湾で貿易商を営み財をなした方のようね。40代の時に膵臓を患い、長い闘病生活が続く中で三清道祖を始めとした道教の諸尊に病気の平癒を祈願し、無事完治したことから感謝の念を強く抱いてお宮の建立を思い立ったのだとか。But 幾らお告げだからと云っても、当時のこの辺りは雑木林と桑畑が広がるだけで、今みたいにアスファルト道路なんてあろうハズもなく、細い農道があるだけで、何と未だ若葉駅も開業していなかったと云うの。そんな環境の中で、幾ら財力があったとしても何の手蔓も無い異国の地で事を為すと云うのは大変なことだったと思うわ。異国の人に加えて宗教施設、それも日本人には余り馴染みの無い道教のお宮とあれば、地元の人達からの理解も容易には得られなかったのではないかしら。
聖天宮は道教の伝説にある天界の宮殿であります。絢爛豪華な造りは神さまの世界を現しており、特徴である飛軒式屋根(反り返った屋根)は地平線の彼方までも広がる壮大な天を表しています。黄青白赤黒の配色は中東西南北、万物を示し、特に屋根瓦の黄色は道教のお宮または皇帝(天子)の建物にしか用いることが出来ない決まりがあります。屋根飾りには伝説の瑞龍・龍・鳳凰などがあり、また仙人が住む霊山が雲海の隙間から顔を覗かせています。これらは中国台湾のお宮の特徴であり、現地に行かれると良く見られます。
ここで気になるのが道教のことよね。
聖天宮ではその答えもちゃんと用意してくれているの。
道教は中国史の起源に遡る太古の民間信仰です。根源には神仙思想があり、所謂神さまと超人的な妙技を持つ仙人を信仰の対象としています。神の力は絶大でありますが、仙人の技は会得できるとされ、特に不老長寿の探求は漢方、中国料理、また人類の三大発明である火薬に繋がったと云われています。このように陰陽・八卦を始めとする思想は占術・風水・気功などに発展しました。神仙思想は古くから様々な形で日本に伝わり、天の四方を指す四神(朱雀・玄武・青龍・白虎)は奈良のキトラ古墳の壁画に描かれています。又、平安時代に隆盛した陰陽道はこの影響を受け、空海や安倍晴明が実践したことで良く知られています。
やがて、道教の信仰は中国の文化となり、道教が説く万物の根源を導く原理・道(タオ)を主体とした哲学が生じました。乱期の中国春秋戦国時代、諸子百家と呼ばれる様々な思想家達の登場により、道に基づいた哲学が確立され、道家・儒家・墨家・陰陽家などの学派は後世まで影響を及ぼしています。諸子百家のあらゆる思想は、いずれも道教の要素の相生相克の産物であり、例えば老子は道を悟るには知や欲を働かせる人為を無くし、無為で道に従い生きることを説いています。一方、孔子は道を仁義の道とされ、積極的に実践する必要があり、上下秩序、徳による王道で天下を治めるべきであると説いた幾つかの例があります。江戸時代には徳川家康公が儒家の一派である朱子学を国家運営に取り込み、武士道として確立し、武家社会に浸透させました。信仰と哲学の両面を持ち合わせた道教の世界観はタオイズムとして、古くから東洋のみならず、西洋でも根強い関心を集めています。道教は様々な世界観を包含しながら、現在も中華圏の人々の心に息づいており、さまざまな中国文明の結晶と云うべき文化遺産そのものが、道教の具現化された姿と云えます。宗教法人 聖天宮
八卦天井:天井は一万点以上の楠木の彫刻を金箔で施し釘を使わずに組み込んでいます。森羅万象を表し、万物と万物の平安を見守る神さまも鎮座されております。彫刻のみで形成された森羅万象の天井は珍しいものです。中心のドームは八角形に組まれ、中の宇宙生成の概念である陰陽・八卦の八卦を表します。八卦から万物万象が無限大に広がる様子を表しています。やがて万物は広場の入口にある天門を通られ、天界から俗界へと広がっていきます。天文の軒下には同じ彫刻が施されているのはこれを表しています。
「当たるも八卦当たらぬも八卦」のことばがあるように、お神籤は八卦の下で引くのが本来の姿なの。
お神籤を引くにも独特の作法がありますので、お出掛けの際に忘れずにチャレンジしてみてくださいね。
本殿内には道教最高位の元始天尊・道徳天尊・霊寶天尊の三神が祀られているの。出来ればその御尊顔を紹介したいところなのですが、神さまとあっては徒らにレンズを向けるわけにもいかないわよね。説明には「道教の神々が祀られており、煌びやかな造りは中国台湾の人から見た神さまの世界であります。天井は木彫物を釘無しで螺旋状に組まれています」とありますが、三神を始め、本殿内部をどうしても御覧になりたい方は御面倒でもお御足をお運び下さいね。その本殿前では道教の神さま達の使いの九龍が睨みをきかせていたの。
九龍網:一枚の岩から彫られた九頭の龍、九龍。九と云う龍の数は最高位の神、または皇帝しか用いることが出来ません。中央の龍の右手には力の象徴である龍玉、左手には神の威令を表す旗旄が握られています。龍・鳳凰・麒麟・魚虎(鯱)・獅子などは神さまの使者であり、中でも龍は位が高く、天変地異も引き起こすと云われています。古来から龍は雨乞いの儀式と深く関わりを持ち、龍が現れ雨が降ってきたという伝説が世界各地に残されています。龍の爪の数にも意味があります。五つの爪を持つ龍は最強であり、皇帝の時代には龍の爪の数は厳格に制限され、許可無く用いることは反逆とみなされ、死罪を伴いました。
因みに、日光東照宮の鳴き龍は三爪であり、中国明王朝に対しての配慮と云われています。また、男神には龍が使われますが、女神には鳳凰が使われ、皇后の象徴になります。聖天宮には三尊の男神が祀られているので龍が随所に見られます。
本殿で三清道祖の御尊顔を拝したところで、鼓楼に登楼出来ると云うので登ってみたの。
その鼓楼には紅寿燭があったのでξ^_^ξも記念に。
階上からの周囲の眺めも仲々素敵でしたが、何よりも前殿の屋根が手を伸ばせば届きそうな距離にあり、その造りの見事さが目の前に迫ってくるの。地上から眺めただけでは味わえない迫力で、これは必見よ。最後までお付き合いくださったあなたにスペシャル・プレゼントよ。掲載画像を含めて、撮りためてきたものをスライドに纏めましたので御笑覧下さいね。御覧になるには左掲の画像をクリックして下さいね、別窓を開きます。尚、スライドには簡単な説明や戯言(笑)を付記しておきましたので追体験される場合の参考にして下さいね。
聖天宮
Time 00:04.37
聖天宮の存在はξ^_^ξも訪ね来る前までは知らずにいたのですが、その建物をいざ目の前にしてみれば、細部に至るまで華麗な彩色と精巧緻密な彫刻が施され、その一つ一つが一級の美術品と云っても過言ではないの。国内では見掛ける機会が極めて稀な道教のお宮であることに加え、国内最大級だと云うのですから是非一度お参りしてみて下さいね。それでは、あなたの旅も素敵でありますように‥‥‥‥
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