都市農業公園と云う名称から推して堅苦しい印象を受けてしまいますが、いざ訪ねてみれば農業とは無縁の方でも充分に楽しめる公園になっていたの。とりわけ園内に数多く植えられている里桜が開花する時期には嘗ての「 江北の五色桜 」が再現されたかのような景観が広がるの。
足立区都市農業公園は区内の農業振興に利するために区制50周年記念事業の一環として昭和59年(1984)に開園されたもので、平成7年(1995)にリニューアルオープンしているの。現在は「 自然に学ぶ、自然と遊ぶ、自然と共に生きる 」をコンセプトに、園内にある田畑では無農薬無化学肥料による稲や野菜の栽培を行い、田植えや稲刈り、野菜の収穫体験などができるようになっているの。田や畑があればそこには草もあれば虫や蛙などの小動物もいるわけで、農業と自然は切っても切れない関係にあり、普段口にするお米や野菜が育つ様子を見ることで自ずから自然との関わりも見えてくると云うわけ。一方で、嘗ては五色桜の名所として知られた地故に、園内には里桜を中心に約50種250本ほどの桜の木が植栽されていて、開花時期には訪れる人の目を楽しませてくれるの。開園時間 9:00-17:00 But 6月〜9月は18:00閉園 入園料 無料
公園内にある施設の開館・営業時間は施設によって異なるの。公園の開園・閉園時間とイコールではないので要注意よ。あまり気にしなくても構わないとは思いますが、心配な方は 足立区都市農業公園 から公園パンフレットがダウンロードできますので、そちらを御参照下さいね。
〔 ワシントンからの里帰り桜 〕足立区江北の一帯は、荒川の五色桜と呼ばれた桜の名所でした。五色桜とはソメイヨシノのほかに、当時珍しかったヤエザクラなどの品種が混植されていたため、白や黄色、淡紅色、濃紅色などに彩られ、五色の雲がたなびくが如く見えたことからこの名がついたと云われています。明治45年(1912)、当時の東京市長・尾崎行雄が日米友好の証として、12品種3,000本の桜苗を、首都ワシントンに贈った話は有名ですが、このときの桜が五色桜でした。その後、ワシントンのポトマック公園は世界的な桜の名所となりました。しかし、本家の荒川の五色桜は、堤防工事や公害の影響で衰退してしまいました。足立区では、この由緒ある五色桜を復活させるため、区制50周年記念事業として桜の里帰りを計画しました。そして昭和56年(1981)2月、多くの関係者の努力と米国の協力により、主としてポトマック公園の桜から枝を採取し、35品種3,000本の桜里帰りが実現しました。ここに植えられている桜は、この里帰りした桜の一部です。区内の緑化、美化のために、みなさんで大切に育てていきましょう。足立区
〔 旧和井田家住宅( 母屋 )一棟 〕この住宅は江戸時代後期の建築で、間口8間、奥行5間、屋根は寄せ棟造りの茅葺きである。もと花畑2丁目にあった和井田家邸で、伝えに依れば安永2年(1773)頃に生まれた4代目当主の代に建てられたと云う。間取りは典型的な田の字型の古民家で、正面右手の大戸から入るとドマがある。ドマの手前の一画には、籾や米を貯えたコメビツ、奥にはカマドを備えた台所であるカッテがある。更にその奥にはミソベヤがある。左手には家族の居間であるイタノマ、寝室に使われたヘヤ、平書院と床の間を備えたザシキやオクと呼ばれる部屋などがある。イタノマとヘヤが根太天井であるのに対し、ザシキとオクは棹縁天井であり、二部屋の間には欄間も設けられている。イタノマとヘヤは日常生活の場であり、ザシキとオクは格式を備えた空間となっている。天井裏にはドマから梯子で昇り下りし、物置として使用された。安政2年(1855)の安政大地震を経て来たと云うこの家屋は、台所をはじめ、南側瓦葺きの庇、西側廊下と便所など、増改築の後をうかがうことができる。東側壁面は、竹を細かく割って土真壁を覆うしぎ竹と云う工夫も見られる。またドマや軒先に敷き詰められた煉瓦は、明治時代の花又帝国煉瓦の工場で造られた製品である。この住宅は貴重な江戸時代の農家建築として区に寄贈され、昭和58年(1983)12月に足立区指定有形民俗文化財となった。翌年に掛けて足立区都市農業公園に移築保存され、一般公開されている。平成22年(2010)3月 足立区教育委員会
残念ながら建物の周りは竹塀で囲まれていて立入禁止状態にあり、内部の見学はできないの。それはさておき、昭和59年(1984)8月25日に建てられた移築記念碑には、旧和井田家住宅母屋と併せて、同じく江戸時代後期の建築とされる薊家納屋一棟も移築されたことになっているのですが、見当たらないの。どうしちゃったのかしらね。こちらも足立区の指定文化財になっていたみたいだけど。
〔 旧増野製作所長屋門 〕現在の足立区谷中周辺は、江戸時代初期に開発された谷中新田である。谷中新田には北の浅野久右衛門の開発地と南の吉野長左衛門の開発地があり、それぞれ上谷中、下谷中と云う呼称もあった。元禄年間(1688-1704)にこの上下の谷中は分村し、それぞれ開発者の名前を冠して久右衛門新田、長左衛門新田となった。旧上谷中の浅野久右衛門家は、地名と名前から各一字をとり谷久様と呼ばれていた。この長屋門は明治30年(1897)頃の建築で間口17.5m、奥行4.8m、高さ3.9m、屋根は入母屋造りの桟瓦葺で、浅野家の正門として谷久門と称されていた。その後、昭和11年(1936)に増野製作所の創業者・増野清香氏が現・青井5丁目に新工場を建設する際に譲り受け、これを補修し多年にわたり工場の正門として利用された。昭和50年(1975)に同工場が茨城県へ移転する際、後継者である増野鋼四郎氏が保存を決意し、防護柵を施す等保護に尽力された。平成12年(2000)都道補助140号線の建設に伴い区が寄贈を受け、東京都建設局の協力を得て当地に移築復元した。平成13年(2001)10月 足立区教育委員会
古民家の前には菜の花畑があり、黄色の絨毯を敷き詰めたかのような景観が広がっていたので、みな同じ菜の花かと思いきや、アブラナ科の野菜が集められていたの。
実は「 菜の花 」は特定の野菜を指すわけではなくて、ブロッコリーやハクサイなどのアブラナ科の野菜の花を一纏めにした呼び名だそうよ。なのでブロッコリーの花も、ハクサイの花も菜の花と云うわけ。ξ^_^ξはこれまで菜の花は野菜の名前は知らなくても特定の菜花のことだとばかり思っていたの。ξ^_^ξにしたらちょっとしたカルチャーショック状態でした(笑)。確かにチンゲン菜もハクサイも見た目は立派な菜の花よね。因みに左掲はパクチーの花よ。こちらは菜の花ではないのですが、パクチーの花なんて普段見る機会はないわよね。なので参考までに。
その菜の花畑と少し離れてネモフィラが植えられていたの。
チューリップや金魚草などを寄せ植えしたミニ・ガーデンも。
公園のほぼ中央に位置してあるのが水田で、訪ねたときには一面のレンゲソウ( 蓮華草 )で覆われていたの。今のように化学肥料なんて無かった頃はレンゲソウを緑肥として利用してきたのだそうよ。そのために人為的にレンゲソウの種蒔きをすることもあったのだとか。田圃に咲くレンゲソウは春の風物詩として知られますが、そういった実用的な面もあったのね。因みに、レンゲソウの花ことばは、心が和らぐ・私の苦しみを和らげる・感化 だそうよ。by 花言葉事典 花名の由来ですが、よく見ると一つの花は複数の小花からなっていて、その形が蓮の花に似ていることから名付けられたものみたいね。
次に足を向けてみたのが「 人と自然の共生館 」で、建物の外周にはハーブ園がつくられていたの。建物の中はガラス温室になっていて、人と自然の関わりを体験できる展示やプログラムを実施しています−とあったのですが、ちょっと見は熱帯植物を展示したミニ温室ね−と云うのが正直な感想よ。展示よりも不定期に行われる体験学習などのプログラムに重点が置かれているのかも知れないわね。訪ねたときには珍しい マンゴー と、ヒスイカズラの花を見ることができたの。補:マンゴーの花の現地案内板の説明が気になる方は青字部分をクリックしてみて下さいね。
工房棟の建物の前で花を咲かせていたのが江北匂( こうほくにおい )で、案内板には「 ヤマザクラの園芸品種。もとは荒川堤にあった桜で、都立小金井公園より頂いた接ぎ穂を栽培し、当公園に植えました 」とあったの。名前に江北を冠していることからお分かりのように、この桜もまた荒川の五色桜ゆかりの桜ね。
〔 郷土の名桜「 江北匂 」物語 〕「 江北匂 」は桜博士の三好学東大教授が大正初め、荒川堤の高橋茶屋( 現在の鹿浜2丁目付近 )で白色一重で山桜系の新種を発見し、私達の郷土の地名をつけて発表された桜です。しかし、戦後その所在が不明で、絶えてしまったものと思われていました。ところが、当会の会員が数年前に都立小金井公園に植えられていることを確認しました。早速まぼろしの桜であった「 江北匂 」の穂木を都の許可を頂いて、里帰りが実行に移されました。親木の樹勢はかなり衰えていましたが、接ぎ木は会員の手に依って成功し、その後は専門業者に委託して育てて頂き、立派に成長し生まれ故郷に戻って参りました。江北村の歴史を伝える会編 江北の五色桜だより−より
>>> 江北の五色桜資料展示室 <<<
ここでは江北五色桜だけでなく、墨田堤の桜についての解説もあり、桜と人間の関わりの歴史、桜の品種などについても案内されているの。全部を読破できた暁には立派な桜通になっているかも知れないわね。But 総ての説明に目を通すとなるとかなりの時間が必要になるけど(笑)。
〔 江北五色桜 〕昔、荒川堤の五色桜は東京でも有数の桜の名所として親しまれていました。五色桜とは品種の名前ではなく、染井吉野のほかに八重桜などの品種が混植されて白や黄緑、淡紅色、濃紅色、紅色などに彩られ五色の雲がたなびくように見えたためと云われています。ここには当時の風景を再現するために里帰り桜の中から34品種82本の桜が植えてあります。足立区都市農業公園
その江北五色桜ですが、明治19年(1886)に78種3,225本の桜が植樹。補植が続けられ、明治43年(1910)頃に最盛期を迎えたみたいね。その頃は何と約6Kmにも及ぶ桜並木となっていたのだとか。今私達が普段目にする桜並木とは規模が違うわね。ましてやソメイヨシノではなくて里桜よね。圧巻の光景が続いていたのでしょうね。
圧巻と云えば、展示資料の中に公園内や公園周辺で見られる桜の品種一覧表があったのですが、飛び抜けた花弁数を持つ桜があったの。それが「 鵯桜( ヒヨドリザクラ )Cerasus ( Sato-zakura Group ) 'Longipedunculata' 」で、他の桜の花弁枚数が多くても60枚程度なのに対して、この鵯桜の花弁は何と280〜450枚もあるのだそうよ。芝生広場にあると云うので探してみたの。補:この後に紹介する桜のスライドに収めてありますのでお楽しみにね(笑)。
>>> 昔の農機具展示室 <<<
嘗ては足立区でも一大消費地を間近に控えていたこともあり、農業も盛んに行われていて、中でもコマツナ、カリフラワー、レンコン、キャベツ、ネギ、セリ、あゆたで、ねいも、つまものなどは足立の特産物として知られていたのだとか。ここでξ^_^ξがちょっと気になったのが左掲の「 せりつみタンゴ 」と 「 てぶろ 」で、他ではあまり見ない農機具だったの。二つともセリの収穫時には必要不可欠のものだったみたいね。
冬場の冷たい水に浸かりながらの作業はさぞかしつらかったと思うわ。ぬるま湯にどっぷりと浸かっているξ^_^ξにはとても真似の出来ない作業ね。でも、この二つの農機具が展示されていたことで、はじめて当時のセリ農家の人達の大変さが理解出来たわけで、貴重な資料でもあるわね。
〔 足立の花卉 〕近郊農村の作物の一つとして、花の栽培も行われた。足立区域周辺の花つくりの歴史は、近世後期からと考えられ、江戸時代の名所を書き上げた「 江戸名所図会 」にもその様子をうかがうことができる。足立区域では、西新井地区の菊の栽培が古くから有名であった。大正期に入ると最新式のガラス温室を利用した花栽培が試みられるようになった。大正5年(1916)に鴨下金蔵氏によって完成された冷蔵によるチューリップの促成栽培は「 足立のチューリップ 」として、全国的にその名を轟かせた。足立区では花卉組合が結成され、その高い技術は現在も日本の花つくりをリードしている。
農作物の栽培と共に、足立区では花卉の栽培も盛んに行われているようで、菊・アヤメ・テッポウユリ・スカシユリ・チューリップ・フリージアがあげられていたの。区内の花卉栽培農家の方々が育てた花々を展示する品評会なども定期的に行われているようで、足立区内の農作物や花卉の栽培の現状が気になる方は 農業PR動画 を御覧になってみて下さいね。エッ、そんなものまでつくっているの−と、ちょっとビックリするかも知れないわよ。
お勉強が済んだところで、この時期のもう一つのお楽しみがお花見よね。
と、その前に、芝生広場の新芝川側では里桜に負けじと花桃が見事な花を咲かせていたの。
先ずはそちらから紹介しますね。
そして、お待ちかねの里桜の紹介よ。
訪ねたときはまさに満開で、往時の「 江北の五色桜 」もかくやあらん−と思わせるような景観が広がっていたの。この頁に貼り付けるにはちょっと画像の枚数が多いので、ここではスライドに纏めてみましたので、御覧になりたい方は左掲の画像をクリックしてみて下さいね、別窓を開きます。因みに、左掲は先程江北の五色桜資料展示室の紹介のところで触れた鵯桜よ。本当はもっと接近したかったのですが、高いところにしか花が無くて。花弁が多い割には小さくて可愛らしい花ね。この鵯桜、園内には芝生広場に一本あるだけみたいなので、お出掛けの際には忘れずにね。
「 あだち五色桜の散歩みち 」の散策後に訪ねた足立区都市農業公園ですが、ここにも数多くの里桜が植えられていて、園内は春爛漫の装いだったの。それにしても量感のある花をつける八重桜に、こんなにも多くの品種があることを初めて知ったの。今回は園内の芝生広場を中心にお花見をしましたが、公園前の歩道や新芝川沿いなど、園の周囲にも桜並木が続いているの。ソメイヨシノは一斉に開花して花を散らせてしまいますが、里桜は比較的長い期間にわたり見ることができるのはうれしいことよね。園内では珍しい「 菜の花 」や懐かしいレンゲソウなどの花もあり、ほっこりとした時間を過ごすことができたの。あなたも是非一度お出掛けになってみて下さいね。それでは、あなたの旅も素敵でありますように‥‥‥
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